【雑記】同人ゲームのパッケージ等に関するあれこれ
はじめに
皆様もご存知の伝説的ゲームクリエイターである内藤時浩氏が開発したXeGrader for MSX2が、ついに4月1日から予約を開始しました。
【予約販売開始】XeGrader for MSX2 の予約を開始しました。皆様よろしくお願いいたします。詳細はこのリンクからご確認ください!基本パッケージと特別付録付きパッケージがあります。https://t.co/xBQuMgClbl pic.twitter.com/0qfi9OvME6
— 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) 2025年4月1日
2月に体験版が公開された時、私はCELIA for MSX2の開発で手一杯だった事もあり、XeGrader for MSX2の動作テストには参加しませんでした。興味はあったのでWebMSXやOpenMSXで数時間遊んではみましたが、バグの発見には至らなかった事もあって「遊びました」等の報告はしませんでした。
その代わり、CELIA for MSX2のために調べて蓄積してきたノウハウを内藤さんにDMで提供していました。
今回のXeGraderの値段を抑える事に成功した背景には、MA-Xさんが製造ノウハウを惜しげもなく伝授して頂いたからに相違ありません。そのため、私が試行錯誤する時間が大幅に削減できたので、コストダウンに注力することが出来ました。ここにオープンで感謝の意をお伝えいたします。 https://t.co/d56Ry5FwTL
— 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) 2025年4月2日
この時のリプライでも書きましたが、時間さえかければ同じノウハウは得られていた筈なので、内藤さんが必要としているノウハウを勿体振らずに共有しました。私が若かった頃に内藤さんが作ったゲームソフトで十分楽しませてもらったので、その恩返しができて良かったと思っています。
…で、ここからは私がパッケージに関するノウハウを得るに至った経緯を紹介しようと思います。
パッケージに凝り始めた経緯
CELIA for X68000販売継続の危機?!
ある日、BEEP秋葉原店に行くと、従業員の某氏から次のような相談を受けました。
最近は、同人ゲームも綺麗なパッケージが増えてきました。
CELIAは今の状態(OPP袋にA4判の取説1枚)だと陳列しても他の商品と比べて見劣りしてしまうので、いい感じに改善することは可能でしょうか?
AKIBA PC Hotline!で紹介された時の当該記事内の写真を見ていただくと一目瞭然ですが、確かに見栄えはしません。
取扱説明書は東京カラー印刷様で印刷していただいたA4判両面カラー印刷ですので、カラーコピーやプリンターで印刷するよりも全然綺麗ではありますが、パッケージングはOPP袋のみと簡素でしたので、「いかにも同人」というチープさは否めませんでした。
この頃のBEEP様では、Windows PC用同人ゲームの取り扱いが始まったばかりでした。Windows PC用同人ゲームの媒体の主流はDVD-ROMですので、CD用ジュエルケースやDVD/Blu-ray用トールケースにDVD-ROMを入れ、カラフルなイラスト入りのジャケットを差し、シュリンク梱包をしているものばかり。それらと比べてしまうと、たしかにOPP袋の梱包では見劣りしてしまって勝ち目がないのは明白でした。
5インチフロッピーディスクの製造・販売が終了して久しい時期でしたので、5インチフロッピーディスクを収納できる汎用的なパッケージなど存在する筈もありません。ましてや業者に専用箱の製造を発注したら、製造原価が跳ね上がってしまって販売価格が3倍以上になってしまいます。
この時は流石に2ヶ月間ほど真剣に悩みました。前述の某氏には悪気など全く無かったのでしょうが、その時の私は「改善できるまでは追加発注はしません」という意味で受け止めていました。
この時の私は、「ワンストップの製造ソリューションが確立しているWindows PC用同人ゲームと同等のクオリティを求めるとか、無理難題にも限度があるだろ!」というのが本音でした。しかし、ここで引き下がってフェードアウトしていくのは正直言って悔しいではないですか。
ここから私のプライドを賭けた勝負が始まりました。次の3点を死守した上で、前述の某氏を驚かせてやろうと心に誓いました。
- 原価以上の見栄えに仕上げる
- 販売価格を可能な限り下げる
- 製造に係る労力を可能な限り軽減する
とある同人誌との出会い
まず最初に探したのは、パッケージングについてのノウハウを公開しているWebサイトや同人誌でした。そして辿り着いたのが「Doujin Game Package Design Vol.02」という同人誌でした。
この同人誌、購入して本当に良かったと思います。とにかく誌面がクールなんですよ。実例を図鑑的な体裁で解説しており、読みやすい上に知りたいことは全て網羅されており、情報の過不足がない。
いやホント、これから同人ゲームを作ろうと考えているならマスト・バイなのは間違いないのですが、残念ながら現在は頒布されておりません。電子書籍でも構わないので再販して頂きたい一冊です。
しかし、ここで問題が発生しました。誌面で取り上げられてるのは全てWindows PC用同人ゲームですので、当然ながら媒体はDVD-ROMだけです。拙作「CELIA for X68000」は5インチフロッピーディスクですので、全く以て参考になりません。当たり前と言えば当たり前の話です。
他にも参考になるWebサイトや同人誌を探しましたが、結局見つけることはできませんでした。
この同人誌に書いてあった製造ノウハウは役に立ちませんでしたが、パッケージや取扱説明書を市販ゲームソフトのレベルまで引き上げるためのデザイン面でのノウハウは非常に役に立ちました。
創意工夫を経て…
「先人達によって蓄積されたノウハウを拝借する」という目論見は、この時点で見事に失敗に終わりました。
「あきらめたらそこで販売終了ですよ?」
「安西先生…同人ゲームが作りたいです…」
気を取り直して、5インチフロッピーディスクがぴったり入るケースを探す事にしました。
毎日何時間もググって調べるだけでは飽き足らず、外出した時は目に入る箱という箱の内寸を測っては「これじゃ入らないか…」とか「これは高過ぎるか…」とかブツブツと独り言を言ってはため息をつく日々。
そしてようやく、現在使用しているパッケージに辿り着きました。
元の製品の状態だと5インチフロッピーディスクを収納することができなかったため、内側の余分な箇所をアートナイフで切断する加工が必要でしたが、その程度の労力で解決できたのは非常に幸運でした。
ケースさえ選定できれば、あとは印刷物だけです。Adobe Illustrator*1を使ってジャケット、取扱説明書、フロッピーディスクラベル、スリーブ(所謂パンツ)のデザインを作成し、各印刷業者に発注するだけです。
原価は倍以上に跳ね上がってしまったものの、努力の甲斐あって「原価以上の見栄えに仕上げる」「販売価格を可能な限り下げる」「製造に係る労力を可能な限り軽減する」という目標を達成することができました。
前述の某氏からは「良くなりましたね!」とお褒めの言葉を頂きましたが、ここに漕ぎ着くまでにはこれだけの苦労と努力があったわけです。
斯くして、ようやくBEEP様へ再び納品できるようになりました。
2025/04/03 16:43追記
この時の無理難題を解決するために得たノウハウが、後にとても役に立っております。心から感謝しております。
まとめ
今はWindows PCが主流の時代ですから、レトロPCやレトロゲーム機に丁度良いソリューションが存在しないのは仕方がないことだと思います。また、それらが現役ハードウェアだった時代の即売会では、フロッピーディスクとコピー紙の取説1枚を梱包せずに手渡しするのが主流であり、良くてもOPP袋で梱包する程度でしたので、現代のスタイルでレトロPC向け同人ゲームを売るということ自体が非常に挑戦的な事なのだと思います。
宣伝
CELIA for MSX2が完成次第、CELIAシリーズのパッケージやデザイン等のソフトウェア面以外のノウハウや体験談を同人誌にしようと思います。
これからレトロPCやレトロゲーム向けに同人ゲームを作ろうと考えている人には参考になるかと思います。
間に合えば夏コミ(C106)、遅くても第15回マイコン・インフィニット☆PRO-68K(MI68)の会場で頒布しようと思います。
同人ソフトと著作権表記の問題
はじめに
先日、Xにて当サークル代表(@max_2608)が次の引用リポストを投稿しました。
これ(リンク先)と関係あるのかも。
— MA-X @ B-Cat Software (b-cat.jp) (@max_2608) 2025年3月19日
昔の同人ソフトやフリーウェアの場合、本名や連絡先を公開していないケースも珍しくないので③-1になる可能性があり、連絡先が草の根BBSだったり現在無効になってるメールアドレスだと④-2になる。https://t.co/xeWVzP2g0e https://t.co/XSfx9fVSqh pic.twitter.com/90iNMHAdLj
この投稿の目的は、引用元のトラブルについて邪推や糾弾ではなく、2023年の法改正が同人活動に悪影響を与える可能性について純粋に気になってしまったからです。
Xで始めた話題ですが、Xというツールはこういう議論には不向きだと思い、ここに当サークルとしての見解をまとめる事にしました。
新制度の影響
引用リポストの中で取り上げられている赤松健議員のフロー図を下記に引用します。
これを、同人ソフトに当てはめてみましょう。
- ① 個人または趣味のサークルであるため、集中管理されていない → ②へ
- ② 無断複製および配布の禁止が明示されていない → 新制度の対象
- ③-1 連絡先が明示されていないと連絡不能と判断される → 新制度の対象
- ③-2 連絡後
- ④-1 返答がある → 新制度の対象外
- ④-2 一定期間返答がない → 新制度の対象
同人ソフトの場合、②について明示されていないケースも少なくありません。また、住所・氏名を明記していない作品の方が多いだけでなくサークル名やペンネームだけしか明示されていない事も珍しくありません。更に、インターネットやSNSが普及する以前の同人ソフトの場合は、権利者へ連絡する手段が存在しません。
これらの理由から、同人ソフトは
著作権表記の課題
当初、CELIA for MSX2では起動直後に著作権に関する警告の画面を挟む予定でした。但し、具体的な文言は完成目前で検討しようと考えていました。
前述の引用リポストをご覧になったのか、内藤さんも著作権表記について気になったようです。
うーん、著作権の文言画面要るかなあ。要るかと思って作り始めたんですが、ちょっと大仰な感じもするよね。どうしよう…。インディーズで既に発売してる皆さんの意見とか、購入する側の意見とか聞きたいです。
— 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) 2025年3月20日
その後、数名からのリプライを受けて、起動時に警告文の表示を行う方針を取り下げる決断をされたようです。
これから遊ぼうとしてる人に「いいか!コピーすんじゃねぇぞ!」ってのは、ダメだよなあ。だいたい目にする大多数の人は正規ユーザーで、コピーしちゃう人はごく一部。そして、そのごく一部は警告なんか気にしないと。くっそお…、なんか理不尽だ。って、購入者は思うよねぇ…。
— 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) 2025年3月20日
無断配布対策を目的としては無粋なだけで邪魔な存在だという点では、当サークルも完全に同意です。前述のように、文言に悩んで実装を先送りにした経緯があるくらいです。
当サークルの見解としては、(起動時ではなくとも)ゲーム本体のどこかに権利者の連絡先や著作権法の警告を確認できる画面を設ける必要はあるのではないかと考えております。
その理由を次に挙げます。
著作権法の警告および権利者の連絡先明記の必要性
本件に関する当方の目的ですが、法的拘束力による無断複製・配布の抑止ではなく、あくまでも著作権法の新制度(権利者とコンタクトが取れない場合の例外措置)の乱用を防ぐことが最大の目的です。
無断配布するような人達のためにどんな対策を施そうが、大半は無駄に終わってしまいます。それは、パソコンソフトがフロッピーディスクにプロテクトを施してはファイラー(プロテクト解除ツール)で対策されて……を繰り返していたことからも明白です。
では、著作権法の警告や権利者の連絡先をゲームソフト内に入れる事は無駄なことでしょうか?
前述の通り、2023年の著作権法改正に伴う新制度は、条件次第では権利者の許諾を得ずに著作物を利用することができてしまいます。それを防止するためにも、次の対策が必要になります。
- 無断複製および配布の禁止を明示すること
- 著作物の利用に関する交渉が可能な連絡先を明示すること
上記の条件を満たすためにも著作権に関する警告や連絡先の明示は必要ではないかと当サークルでは考えております。また、「取扱説明書に記載すれば大丈夫」という意見も見受けられますが、そもそもゲームソフトのイメージファイルに取扱説明書をスキャンしたPDFファイルをご丁寧に添えて無断配布くれるような律儀な人などいないと考えた方が良さそうです。
無断配布された同人ソフトが数年の月日が流れてパブリッシャーの目に止まり、販売許可を得ようとしても権利者に連絡が取れなかったら……。そのような可能性を考えたら、やはりゲームソフト本体に(起動直後ではなくとも)表示する機能は必要ではないかと思います。
強制的に見せられる画面もはない限り、その機能を追加した事について「俺達を泥棒扱いするな!」と文句を言うような人が現れたとすれば、単にその人が過剰過ぎるだけではないでしょうか。
まとめ
MSXソフトのパッケージ(外装)について
はじめに
本当は「CELIA for MSX2」の頒布を開始してからブログ記事としてまとめる予定でしたが、大幅に開発が遅れている上に、旬のタイミングを逃してしまうと思い、フライングではありますが「CELIA for MSX2」のパッケージの選定のために調べた情報を先出しいたします。
尚、この記事の内容は当サークルがパッケージの選定をしていた2023年前後の情報であり、現在は更に良い選択肢が存在するかも知れない事を先にお断りしておきます。
パッケージのバリエーション
ユニバーサルシェルケース
「CELIA for MSX2」で採用しているパッケージで、AliExpressやAlibaba、eBayなどで購入できます。
大きめな透明のパッケージで且つ自作のインレイを差し込めるので、非常に見栄えが良いです。
数年前までは海外のMSX用インディーゲームのパッケージで採用例が多かったのですが、現在はあまり採用例を見かけなくなりました。
SFC、MD、NES、SNES、N64、CD-ROMなど、あらゆるゲームソフトで使用できるように工夫されているのが特徴ですが、その反面であらゆるカートリッジに対応させている影響でMSXのROMカートリッジをしっかりと固定する事ができません。
MSXのROMカートリッジを完全に固定するためのアジャスターの3Dプリンター用モデルを有志の方が公開して下さってはいるものの、3Dプリント出力サービスを請け負ってる幾つかの業者で見積もりを確認したところアジャスターの原価がパッケージの価格より高かったので、アジャスターの装着を断念しました。
3.17 21:45追記
このケースには上記以外にも欠点があります。それは、ケースの外側の角の部分の強度が衝撃に弱い事です。落下等による衝撃により、角の部分が破損する事があります。
メガドライブ用シェルケース
メガドライブ用市販ゲームソフトのパッケージに使われていたケースの模造品で、AliExpressやAlibaba、eBayなどで購入できます。
前述のユニバーサルシェルケースと同様に、外側のフィルムにインレイを挟むことで市販ゲームソフトのような仕上がりにすることができます。
また、メガドライブとMSXのROMカートリッジの寸法はほぼ一緒なおかげで、ケース内にROMカートリッジをしっかりと固定することができます。
ここまで読むとベストソリューションのように思えますが、欠点が2つほどあります。
1点目は、ROMカートリッジを固定する爪がかなり固い上に、先端部が鋭いのでROMカートリッジに傷をつけてしまう可能性があることです。
気になる場合は、目の細かいヤスリ等で爪の先端を軽く削ってしまうと良いでしょう。
2点目は、インレイを挟む外側のフィルム部の接合(プラスチック溶接)が雑で、フィルムが斜めに接合されていたり接合が不十分な仕上がりの商品が多く紛れ込んでいます。そのため、歩留まり率が非常に悪いです(私の経験では約3割以上が不良品でした)。
治具を使って自力で直すという選択肢もありますが、その工数や労力を考えると現実的ではありません。歩留まり率の分だけ多めに購入し、不良品は処分してしまうか空いている時間で地道に直して再利用するのが現実的でしょう。
「CELIA for MSX2」で採用しなかったのは、主に2点目が理由でした。
キャラメル箱
キャラメル箱といってもピンとこない人も多いのではないでしょうか。名前の通り、キャラメル等の外装として用いられることの多い紙箱で、材質は主にコートボール紙若しくは厚手のコート紙が用いられます。
平成末期~令和にかけて国内でリリースされたファミコン用同人ソフトの大半で、このキャラメル箱が採用されています。
ROMカートリッジと同じサイズの箱にすればトレイ等も不要になりますが、取扱説明書のサイズもそれに合わせる必要があります。一般的な印刷所ではこのサイズに適した選択肢が存在しないため、サイズ指定で注文するか(大抵の印刷所では追加料金が必要です)、A4判で両面印刷したものをデスクカッター等で裁断して自家製本をする必要があります。
ROMカートリッジよりも大きいサイズにする場合、隙間を埋めるための工夫が必要になります。ROMカートリッジを固定するためのトレイを自作するか、隙間を埋めるためのスペーサーまたはトレイを入れて対処を必要があります(入れないと箱の中でROMカートリッジが遊んでしまいます)。
キャラメル箱は最もスタンダードな紙箱の型ですので、安くて仕上がりの良い業者を探すことをお勧めいたします。「キャラメル箱 フルカラー印刷」等のキーワードで探してみてください。
N式箱
N式箱もキャラメル箱同様にスタンダードな紙箱の型で、材質は主に段ボールになります(段ボール以外の材質では強度が足りないため、ゲームソフトのパッケージにはお勧めできません)。
段ボールの表面に印刷できるように加工したものを用意している業者も多いですが、鮮やかなカラー印刷を施すのはやや不向きになります。どうしても鮮やかな印刷で彩りたいのであれば、カラー印刷したスリーブをN式箱に被せてしまうという選択肢があります。
N式箱に限らず任意のサイズの紙箱を発注する場合には、裁断のために使う「抜き型」も一緒に作る必要があります。そのため、たとえ少量生産であっても抜き型の制作費が加算されます(少し調べれば分かりますが、抜き型は意外と馬鹿にならない金額です)。
そこでお勧めなのが、下記リンク先のように既存サイズの無地のN式箱をまとめ買いし、その中に固定用の紙トレイや額縁台紙を入れることでROMカートリッジを固定してしまう方法です。但し、この方法ではN式箱に直接印刷することができないため、スリーブ(前述)と組み合わせる必要があります。
下記リンク先で紙トレイと額縁台紙のテンプレートを作ることができます。そして、作成したテンプレートをプリンターで厚紙に直接印刷してカットするか、型紙に印刷して厚紙に重ねてカットします。あとは、作成した紙トレイ(または額縁台紙)をN式箱の中に両面テープ等で固定すれば完成となります。
まとめ
残念ながら、MSXのROMカートリッジをぴったり収納できる既製パッケージのニーズが1990年代で終わってしまったため、純正どころかクローン商品すら存在しません。たまたまメガドライブのROMカートリッジと同じサイズだったことから、辛うじてメガドライブのROMカートリッジに対応したケースが流用できるのみになります。
在庫の置き場所や歩留まり率の悪さによるコスト増を無視できるのであれば「ユニバーサルシェルケース」若しくは「メガドライブ用シェルケース」を、在庫の置き場所が無ければ「キャラメル箱」若しくは「無地N式箱+スリーブ+紙トレイ」を選択するのが無難ではないでしょうか。
価格については、円相場で大きく変わってしまう上に昨今の不安定な世界情勢の煽りを受けて大幅に変動する可能性があるため、具体的な金額を書くのは差し控えさせていただきました。必要に応じてご自身で調査した上で比較検討をお願いいたします。
RETRO GAME SUMMIT Lv.4(おしながき)
3月22日に開催が予定されているイベント「RETRO GAME SUMMIT Lv.4」での頒布物および展示物について告知させていただきます。
RETRO GAME SUMMITの詳細については下記公式サイトを御覧ください。
当サークル頒布物・展示物
CELIA for MSX2
現在開発中の「CELIA for MSX2」ですが、リリース予定日を正式に延長する事を決定いたしました。主な理由は、演出面の大幅なテコ入れになります。そのため、RETRO GAME SUMMIT Lv.4での「CELIA for MSX2」の頒布およびプレイアブル展示はキャンセルとさせていただきます。
これまでに数々のゲームソフトを開発してきたレジェンドの内藤時浩さんが現在開発中のMSX2用新作ソフト「XeGrader」をはじめ、海外でもMSX2の新作ゲームソフトが次々と発表されており、今の状態のままでは他のゲームソフトに見劣りしてしまうと判断したためです。
新たなリリース予定日ですが、5月末に開催が予定されている日本パーソナルコンピュータ博物館の開館記念イベントのフリーマーケット(2日目)に設定いたします。当日の午前中はフリーマーケットが開催され、午後からはMSXDEVCON11の開催が予定されています。
博物館とIOTメディアラボからのお知らせ
— 西 和彦 Kazuhiko Nishi (@nishikazuhiko) 2025年1月23日
本日の博物館企画会議とMSXの関係者が集まり、小田原の日本パーソナルコンピュータ博物館の開館と記念イベント、次のMSXDEVCON11を同じ時期にしようということになりました
Nippon
Personal Computing
Museum
大学予定地2号館… pic.twitter.com/za98dSLVZF
Early Bittersweet Sound Collection
イベント限定価格 1,000円
当同人サークルがこれまでに開発・頒布した同人ソフトおよび他サークルに楽曲提供した楽曲をほぼ全曲を収録したサウンドトラックです。
bandcampにてデジタルアルバムを販売中ですので、RETRO GAME SUMMIT Lv.4にご来場できない方や当日購入し忘れた方は、是非bandcampにてご購入ください。
bandcampでは全トラックを試聴することが可能です。
委託頒布物(にがHP様)
以下は、にがHP様からの委託頒布物となります。
SoundCoreSLOT EXG(核スロ)
イベント限定頒布品 16,000円
MSXのスロットを2つ拡張すると共に、SoundCoreSLOT EXG(以下「核スロ」と表記)に搭載されたOPLLとPSGの音声をMSX本体を介さずに出力できるという特徴があります。更に、SCC等のサウンドICを搭載したROMカートリッジを核スロの拡張スロットに挿す事により、ROMカートリッジの音声出力もMSX本体のノイズの影響を受けずに核スロの音声出力にミキシングされます。
→ 取扱説明書はこちらで確認できます。
似非SCCDisk MAXIMUMキット
イベント限定頒布品 10,000円
1MBのSRAMを搭載した不揮発性RAMディスクのキットです。
SRAMディスクとしてだけでなく、SCCを低ノイズで発音できるように設計されているため、SCCを使った作曲活動やマスタリング音源の作成で威力を発揮します。
核スロ等のMSX本体を介さずに音声を出力できる機器と組み合わせる事により、SCCのポテンシャルを最大限に発揮することができます。
本製品にはSCC音源LSIは付属しておりません。SCCを搭載したゲームソフト等からSCC音源LSIを取り外す等してご用意いただく必要があります。
→ 取扱説明書はこちらで確認できます。
Mami-VSIF proキット
イベント限定頒布品・特別価格 500円
Mami-VSIF dongle for MSXの高速版キットです。ジャンパを変更する事により、MD/MD互換機等でも使用できます。
MAmidiMEmoがインストールされたWindows PCと本製品とをUSB-Cケーブルで接続し、MSXやMD/MD互換機をMIDI音源として制御することができます。
Adafruit社のFT232Hモジュールは付属していません。MDでご使用になれば比較的安定したPCM音源の再生が可能です。
Z80搭載MSXでもご使用になれますが、MSX turboRで使うことで高速性能が発揮されます。
PanasonicのFS-A1WX/FX/WSXの高速モードはサポートしておりません。
→ 取扱説明書はこちらで確認できます。
Mami-VSIF dongle for MD & VSIFドライバーセット
イベント先行頒布品・特別価格 4,500円
Mami-VSIF dongle for MDとMD/MD互換機用のドライバーを収録したROMカートリッジのセットです。
本来はMD用のフラッシュカートリッジ等を用意してドライバーを書き込むという事前準備が必要なのですが、本製品はドライバーのカートリッジが付属しているので直ぐに使い始めることができます。
本製品はWindows PCとMD/MD互換機が必要です。
→ 取扱説明書はこちらで確認できます。
CELIAのゲームデザインに関する当サークルの見解
はじめに
Xで投稿しようと思ったのですが、文章が長くなってしまうのでブログ記事にしたためる事にしました。
RP> これは本当にそう思う。
— MA-X @ B-Cat Software (b-cat.jp) (@max_2608) 2025年2月15日
先日投稿したブログでは触れなかったけど、「CELIAにこんなブロックを追加したほうが面白いよ」等のアイデアを提案されても、「俺がCELIAを面白くしてやった」とか「アイデア料をよこせ」と言われると面倒くさいので、採用する事はありません。https://t.co/6LlWm7qIr1
面白いアイデアを持っているのなら、自分でゲームを作ればいいと思うんですよね。
— MA-X @ B-Cat Software (b-cat.jp) (@max_2608) 2025年2月15日
でも、そんな事を言うと、CELIAの見た目やゲーム内容はそのまんまでブロックを1種類追加した程度の差分しかないようなゲームを作る人が出てくるんだよね。
他人の褌で相撲を取る事を恥じたほうがいいと思う。
Xにて上記のポストをしましたが、アイデアを採用しない一番の理由は別にあります。それは、現時点でCELIAのゲームデザインは過不足がないと考えているからです。
CELIAのアイデンティティ
CELIAのジャンルはアクションパズルゲームです。
開発者が用意した問題を解く事が「パズルゲーム」というジャンルのアイデンティティであり、これに「時間軸」という概念がプラスされる事によって「タイミング」という要素が加わったものが「アクションパズルゲーム」となります。
要素を増やせば増やすほどゲームが華やかになるというメリットがありますが、ゲームデザインに大きく影響してしまうため、ことパズルゲームにおいてはデメリットとして働いてしまう事が多いのです。
先にも挙げたとおりに、開発者が用意した問題を解く事がパズルゲームの楽しさであり、その難易度が上がれば上がるほどクリアした時に得られる達成感が増していきます。その反面、パズルゲームとしての完成度が低いと、たとえクリアしても達成感を得られなくなります。
では、どのようなパズルゲームが「完成度が低い」と言えるのでしょうか。これはあくまでも私の主観ですが、次のようなパズルゲームの事を指すと考えています。
- ステージの作り込みが不十分
- ゲーム進行をチートできる要素が存在する
- フィーチャーの相関性のバランスが破綻している
ステージの作り込みが不十分
パズルゲームには2つの大切な要素が存在します。
一つは言うまでもなく「ルール」です。このルールに魅力的がないと、そもそもプレイしてもらえませんし、プレイしてもらえても直ぐに飽きがきてしまいます。
もう一つは「ステージデザイン」です。どれだけ魅力的なルールであっても、それを活かせるかどうかはステージデザイン次第という事になります。
面白いパズルゲームを作るには、この2つの要素を両立する必要があります。
ゲーム進行をチートできる要素が存在する
パズルゲームとはプレイヤーと開発者との知恵比べであり、互いに真摯に向き合う事で成り立つジャンルです。
特定のアイテムを入手・使用したり特別なフィーチャーを利用することによって、プレイ中のステージをクリアした事にしたり、途中のステージをスキップして先に進めてしまえるのであれば、それは知恵比べの放棄を意味しており、パズルゲームとしては悪手だと思います。
「チートでスキップしたステージも全てクリアしておかないとエンディングを見せない」という選択肢もありますが、プレイヤーの不満を煽る事となり却って逆効果に働く可能性があります。
フィーチャーの相関性のバランスが破綻している
大半のゲームは、フィーチャーを増やせば増やすほど見栄えが増し、それがプレイヤーの満足度に繋がる事もあるでしょう。しかし、ゲーム全体のバランスに配慮した緻密な計算を怠るとバランスが崩れてしまい、結果的にゲームの設計が破綻してしまいます。
「じゃんけん」に例えると、「グー」「チョキ」「パー」の3つが三すくみの構造が均衡なバランスを保っており、それを「グーはチョキとパーに勝てる」というルールに変更したり、どの手にも勝てる新しい手を追加してしまうと、途端に面白くなくなってしまいます。
CELIAに足りないもの
CELIAの作者としては、CELIAのゲームデザインに過不足はないと考えています。むしろ、今のゲームデザインに新しい要素を追加する事によって、ゲームバランスが崩れてしまったり、パズルゲームとして不完全なものになってしまう可能性が高いでしょう。
では、現時点でCELIAが完璧なゲームなのかと言えば、その答えは残念ながら「NO」です。
これはあくまでも作者の主観的な考えですが、CELIAに不足しているのは「演出」と「初心者への配慮」です。
演出不足
2025年2月現在までにリリースしたCELIAは、演出面が圧倒的に弱い事をを自覚しております。
例えば、近年はファミコン用の自作ゲームでさえも派手なパーティクルを表示するのは当たり前になってきましたし、綺麗なグラフィックのデモシーンを幕間に挿入する事も珍しくありません。しかし、CELIAではそういった演出面が圧倒的に不足していました*1。
対策として「CELIA for MSX2」では、パーティクルの表示や幕間デモの追加などのテコ入れを行っております。
初心者への配慮不足
これまでにCELIAをプレイした方々の意見の中でも、最も多い意見は「難しい」でした。
「難しい」とは言いつつもその難易度を楽しんでいらっしゃる方も多くいるのですが、そうではない方々は後半のステージについて「解法が全く思い浮かばない」という回答をしておりました。
パズルゲームである以上は全ステージをクリアしないとエンディングに到達できないのは至極当然の事なのですが、どんなに頑張ってもクリアできない人にはその「難しさ」が苦痛でしかないのでしょう。
実は一番最初に作った「CELIA for PC-8801mkIISR」では、「初心者向け」と「上級者向け」の2系統のステージを用意していましたが、X68000版を開発する際にその仕様をオミットしてしまったため、X68000版ではパズルゲームが得意な人しかエンディングを見れない状態になってしまいました。
対策として「CELIA for MSX2」では、オミットした仕様を復活し、「初心者」「中級者」「上級者」のそれぞれに向けたステージ構成を用意する事にしました。
「初心者」と「中級者」は簡易的なエンディングではありますが、一応エンディングに辿り着く事ができるようになっています。
CELIAのロードマップ
CELIAシリーズはB-Cat Softwareの代表作であり、下表のとおり1989年から36年間*2も作り続けています。
そんなCELIAではありますが、実は闇雲に新作を開発しているわけではなく、ちゃんとロードマップが存在します。
フェーズ1・2
同人サークル発足時から1994年の無期限休止までを指し、フェーズ2は再販開始から続編の「CELIAおかわりっ! for X68000」の頒布開始までを指しています。
フェーズ3
法人以外(個人)ではサークル名の使用は認められず、必ず本名等の個人情報をオープンにするという制約がAppStore(Apple社)とPlayストア(Google社)の規約に記載されているため、アンチからの攻撃を受けるリスクを回避するために、断腸の思いで計画中止をしました。
フェーズ4
現在進行中のフェーズです。
レトロハード向けのCELIAの開発は、このフェーズを以て終了となります。
フェーズ4.5
フェーズ4の途中で突発的に設定したフェーズです。
瑞起が行っていたX68000 Z Early Access KITに対応したゲームソフトが少ない上にパズルゲーム枠が存在しないということを知り、「CELIAおかわりっ!for X68000」の動作確認を行った上で、パッケージ、取扱説明書、SDカード用のシールを新規で作成し、「CELIAおかわりっ!for X680000Z」として頒布を開始いたしました。
フェーズ5
現役のプラットフォームの中でも一番のシェアを持つWindowsをターゲットにした、新しいCELIAの開発および頒布を予定しているフェーズです。
これまでのCELIAは「レトロPC」というニッチなプラットフォーム向けに開発していたために、レトロPCを動態保存している人しか遊べないという状況が大きな足枷となっていました。
このフェーズで目指すのは、X68000版やMSX2版の単純移植ではなく、グラフィック、サウンド、ステージ構成などを完全に作り直す「リブート」になります。
このフェーズからは、CELIAがより楽しむための新しい機能*4が追加になる予定です。
フェーズ6
近年はPCの所有率が年々低下し、それと入れ替わるように家庭用ゲーム機の所有率が高くなっています。つまり、レトロPCを動態保存しているユーザーや、趣味でWindows PCを所有しているユーザーの大半はマニア層である可能性が非常に高く、彼らによるゲームの評価はマニア視点のバイアスが掛かっていると考えるべきだと考えています。
そのため、CELIAを老若男女関係なく幅広いユーザーに楽しんでもらい、そして正しく評価してもらうためにも、家庭用ゲーム機というプラットフォームを無視するわけにはいきません。
まとめ
長々と書き連ねてしまいましたが、まとめに入ります。
現時点でCELIAはパズルゲームのルールとしては完成の域に達しており、今から新しいフィーチャーを考えたり、皆様からアイデアを頂く必要はないと考えております。つまり、「もっと手を加えて更にCELIAを面白く変えていく」のではなく「CELIAに対する大衆からの評価を知るために、偏ったユーザー層から幅広いユーザー層へとターゲットをシフトする」というのが、CELIAが今後目指していく方向だという事です。
B-Cat Softwareの基本的な考えは「自分で考えたアイデアを形にして、それが多くのユーザーから高評価を得られるかどうか、真剣勝負をする」です。
CELIAをご愛願頂いている皆様には、どうか最後のフェーズまでお付き合い頂き、どのような結末を迎えるのかを見届けて頂きたく存じ上げます。
他人のゲームに対するアイデア(改善案)について
はじめに
突然ですが、皆さんは市販ゲームソフトに対して「私のアイデアを採用すれば更に面白くなる」と思ったことはありませんか?
私は結構あります。
ゲームが好きな人ほど(特にそのゲームに対する愛が強いほど)、そう思う傾向が強いように思えます(サンプルは私の友人・知人・Xの相互フォロワーさん)。
ちなみに、拙作「CELIA」シリーズに対する要望として特に多いのは次の2つです。
- 水晶玉の進行方向を可視化してほしい
- 水晶玉が移動するまでの残り時間を可視化して欲しい
先に結論を述べてしまうと、これら2つの要望を採用することは絶対にありません。
なぜ採用しないのか、その理由を詳しく説明いたします。
ロードランナー
理由を説明する前に、少々脱線しますが「ロードランナー」について触れようと思います。
同作は1983年にブローダーバンド社から発売されたアクション・パズルゲームで、Windows PCが世界中を席巻する前は、ほぼ全てのPCに移植されたと言っても過言ではない名作です。
自らパズルゲームを作るくらいにはパズルゲームが大好きな私は、もちろんロードランナーも大好物です。
どれくらい好きなのかというと、ファミコン版のロードランナーやチャンピオンシップ・ロードランナーを全ステージ制覇するだけでなく、中学2年生の時にMSX BASICで再現しようと挑戦したくらいにはロードランナーが大好きです*1。
ロードランナーをご存じない方は、こちらの記事と動画をご参照ください。
上記の動画を見ていただくと、画面右側にいるロボット(敵)が0:04に金塊を拾ったあと、主人公が掘った穴に0:08に落ち、その場に金塊を落としています。
もう一度動画を見直していただきたいのですが、金塊を所有しているロボットは視覚的な差別化が行われていないため、どのロボットが金塊を所有しているのかを把握する方法は存在しません。
つまり、どのロボットが金塊を持っているのかを正確に把握するためには、ロボットが金塊を拾う瞬間を見落とさず、更にそのロボットの移動を常に把握しておくしか方法はありません。
もし見落としてしまったとしても、金塊を所有していると思われるロボットを片っ端から掘った穴に落としていけば、どれが金塊を持ったロボットなのかを把握することができます。
ユーザーフレンドリーが必ずしも正解とは限らない
ロードランナーの場合、金塊を所有しているロボットが視覚的に差別化されていない事によって、ロボットの動きをプレイヤーが把握することを求められますが、それは「改善すべき不便さ」ではなく、意図的に盛り込まれた不便さであり、それこそが「ゲーム性」の重要な要素のひとつなのです。
もう少し分かり易く表現するなら、「開発者との駆け引き」とも言えるでしょう。
ロードランナーをユーザーフレンドリーにするのであれば、金塊を持ったロボットの色を変えるか若しくは金塊を持っている事がひと目で分かるようなアイコンをロボットの頭上に表示するという選択肢があると思いますが、こんな簡単なことを40年以上経った今でも変更しないというのが答え合わせだと思います。
理由
ロードランナーについて熱く語ってしまいましたが、CELIAにも同じことが言えます。
水晶玉の進行方向を可視化しない理由
「水晶玉の進行方向を可視化してほしい」という要望を採用しない理由は、水晶玉の動きを常に把握した上でセリア(主人公)を操作することがCELIAのゲーム性のひとつだからです。
水晶玉の進行方向を知りたい一番の理由は、恐らく次のようなケースでしょう。
このように水晶玉の進路が両方共塞がっている状態で複数回バウンドすると現在の進行方向が分からなくなってしまうから「進行方向を表示して欲しい」という要望が出るのだと思います。
しかし、これは「バウンドした回数が偶数であれば進入してきた方向、奇数であれば反対の方向」という法則に従って常に進行方向を把握しておく事をプレイヤーに要求するというCELIAのゲーム性のひとつであり、作者としてはこれが考慮不足の不親切なゲームデザインだとは捉えておりません。
「CELIA」では、水晶玉のバウンドによる反転時にSE(効果音)だけではなく視覚効果によるエフェクトでプレイヤーに通知しております*2ので、効果音の聞き逃しや視覚効果の見落としでバウンドを把握できなかったのであれば、それはプレイヤー側の落ち度という事になります。
水晶玉が移動するまでの残り時間を可視化しない理由
次に「水晶玉が移動するまでの残り時間を可視化して欲しい」という要望を採用しない理由ですが、これはそもそも残り時間を把握するシチュエーションが存在しないからです。
まず大前提として「水晶玉が移動する直前を狙ってブロックを押す」というシチュエーションは存在しません。プレイヤーに求められるのは、「次に水晶玉が移動するまでにルートをつなげておく」という作業のみです。
つまり、大切なのは「間に合うか、間に合わないか」であって、どう頑張っても間に合わないのであれば、それは意図的に間に合わないように配置された「罠(トラップ)」であることを意味します。
CELIAの後半ステージでは、正しい解法を気付かせないための目眩ましとして、簡単な解法が存在するように見せかけるトラップを仕組んでいるケースが多いです。その罠のバリエーションのひとつとして「あと一歩で間に合わないように意図的に配置されたブロック」があります。
何十回と挑戦しても、無駄なく操作している筈なのに間に合わないのであれば、それは間違いなくトラップです。その時は必ず別の正しい解法が用意されていますので、トラップに固執したりぜずに、もう一度冷静になって解法を探してみてください。
以上の事から、「残り時間を表示しても何も解決はしない」という事がお分かりいただけたかと思います。
さいごに
もしもあなたが誰かの作ったゲームをプレイして「こうすればいいのに」というアイデアを思いついたのであれば、作者に要望を突き付ける前に一旦冷静になって考えてみることをお勧めいたします。
あなたのアイデアを取り入れることによってゲームデザインの核となる部分が大幅に変わってしまうのであれば、それは取り入れるべきではないアイデアだという事になります。
それならば、いっそのこと別の新しいゲームとしてデザインする事をお薦めいたします。
あなたが本職のゲームデザイナーであればそれを仕事で形にすればよいでしょうし、本職でなければインディーゲームや同人ソフトとして作ればいいのです。
アイデアを形にするために必要なプログラミングのスキルを持っていないのであれば、勉強してプログラミングスキルを修得するも良し、あなたのアイデアを高く評価してくれるプログラマーを探し出してチームを作るも良し。
ゲーム作りはとても楽しいですよ。ゲーム開発沼に足を踏み入れてみませんか?
p.s.
他人様のゲームにインスパイアされてゲームを作るのであれば、インスパイア元のゲームに対するリスペクトを絶対に忘れないように心掛けてください。
- 他人様のゲームの「勝手続編」は作らない(例:勝手に「CELIA2」を名乗る)
- パクリにならないよう、オリジナリティを重視せよ
- 「インスパイア元の作品にフィーチャーを追加しただけ」はパクリと心得よ
もし自分でゲームを作るのであれば、堂々と胸を張れるようなオリジナリティのあるゲームを作ってくださいね。
2024年の振り返りと2025年の展望
今回は大晦日らしいエントリを投稿しようと思います。
2024年の振り返り
何と言っても『CELIA for MSX2』のリリース延期が一番キツかったです。
2023年頃からメンタルが不調になり始め、だましだまし綱渡り状態で踏ん張っていたのですが、2024年に入ってからは悪化が顕著になり、プライベートと仕事の両方ともプログラミング作業に集中できない状態になってしまいました。
このエントリを書いている2024年12月31日の時点でもまだ全快とは言い難く、今の状態の自分自身を受け入れながら最善のパフォーマンスを出せる方法を模索しているような状況です。
リリースできる事を想定して即売会にサークル参加申込みを行ってきましたが、リリースできなかった事を会場で謝罪することの繰り返しになってしまい、それによってますます精神的負担が増えていきました。
開発スケジュールの引き直しを行い、特に問題がなければ2025年3月開催のRETRO GAME SUMMIT Lv.4でリリースできるよう、仕切り直しをしました。
2025年の展望
CELIA for MSX2について
3月下旬開催のRETRO GAME SUMMIT Lv.4にてリリース若しくは開発中のバージョンをプレイアブル展示でお披露目する方向で進めております。
度重なるリリース延期にそろそろ終止符を打ち、MSXのゲームシーンに爪痕を残せるように頑張ります。
次のCELIAについて
CELIAシリーズがレトロPC向けである事から、潜在的なユーザー数の母数は現在でもレトロPCをメンテしながら使用しているオーナーの人数で頭打ちとなってしまいます。
CELIAは、ライトユーザーやパズルが好きな人には刺さるゲームであると自負していますが、残念ながらレトロPCオーナーの求める方向性とはマッチしているとは言い難く、1割り程度の人に刺されば多い方だと考えています。ですので、もっと多くの人に遊んでもらえるよう、次はWindows向けのCELIAに挑戦する予定です。
頒布形式は確定していませんが、SteamかBOOTH等でのDL販売になると思います。
CELIA for PasocomMini PC-8801mk II SRは作るの?
2025年春に発売予定の「PasocomMini PC-8801mk II SR」用に「CELIA for PC-8801mkII SR」のリメイクする事も検討したのですが、現時点では具体的な計画は立てていません。
参考までに、CELIAをPasocomMini用にリメイクする場合、次のような改善をする事になると思います。
これを踏まえると、ドット絵およびCGを作成できるスタッフと、原曲のテイストをサウンドボードII用にアレンジできるスタッフを確保する必要があるため、現時点では断念せざるを得ません。
X68000版では私(MA-X)ひとりでプログラミング、ドット絵、BGMを作りましたが、『CELIA for MSX2』でもPSG版とFMPAC版のBGMを両方一人で作るだけでも結構な労力で四苦八苦しているので、また何でもかんでも一人で背負うのは避けたいと考えています。
こういった事から、恐らくPasocomMini版CELIAは実現しない可能性が高いです。
CELIA以外の新作について
恐らく、私が作りたかった理想のCELIAはWindows版でひとまず完成すると考えています。そうなると、Windows版CELIAを完成したあとの計画を立てる必要があります。
小さい企画と大きい企画の2つの構想があるのですが、先ずは小さい企画の方を作ろうと思います。
内容は…
- アクションゲーム
- 対戦
- 多人数でわいわい遊べる
- Windows用
こんな感じです。
『CELIA for MSX2』とWindows版CELIAの開発が終わり次第着手しますが、どんなゲームになるのかは現時点ではナイショとしておきます。