はじめに
皆様もご存知の伝説的ゲームクリエイターである内藤時浩氏が開発したXeGrader for MSX2が、ついに4月1日から予約を開始しました。
2月に体験版が公開された時、私はCELIA for MSX2の開発で手一杯だった事もあり、XeGrader for MSX2の動作テストには参加しませんでした。興味はあったのでWebMSXやOpenMSXで数時間遊んではみましたが、バグの発見には至らなかった事もあって「遊びました」等の報告はしませんでした。
その代わり、CELIA for MSX2のために調べて蓄積してきたノウハウを内藤さんにDMで提供していました。
この時のリプライでも書きましたが、時間さえかければ同じノウハウは得られていた筈なので、内藤さんが必要としているノウハウを勿体振らずに共有しました。私が若かった頃に内藤さんが作ったゲームソフトで十分楽しませてもらったので、その恩返しができて良かったと思っています。
…で、ここからは私がパッケージに関するノウハウを得るに至った経緯を紹介しようと思います。
パッケージに凝り始めた経緯
CELIA for X68000販売継続の危機?!
ある日、BEEP秋葉原店に行くと、従業員の某氏から次のような相談を受けました。
最近は、同人ゲームも綺麗なパッケージが増えてきました。
CELIAは今の状態(OPP袋にA4判の取説1枚)だと陳列しても他の商品と比べて見劣りしてしまうので、いい感じに改善することは可能でしょうか?
AKIBA PC Hotline!で紹介された時の当該記事内の写真を見ていただくと一目瞭然ですが、確かに見栄えはしません。
akiba-pc.watch.impress.co.jp
取扱説明書は東京カラー印刷様で印刷していただいたA4判両面カラー印刷ですので、カラーコピーやプリンターで印刷するよりも全然綺麗ではありますが、パッケージングはOPP袋のみと簡素でしたので、「いかにも同人」というチープさは否めませんでした。
この頃のBEEP様では、Windows PC用同人ゲームの取り扱いが始まったばかりでした。Windows PC用同人ゲームの媒体の主流はDVD-ROMですので、CD用ジュエルケースやDVD/Blu-ray用トールケースにDVD-ROMを入れ、カラフルなイラスト入りのジャケットを差し、シュリンク梱包をしているものばかり。それらと比べてしまうと、たしかにOPP袋の梱包では見劣りしてしまって勝ち目がないのは明白でした。
5インチフロッピーディスクの製造・販売が終了して久しい時期でしたので、5インチフロッピーディスクを収納できる汎用的なパッケージなど存在する筈もありません。ましてや業者に専用箱の製造を発注したら、製造原価が跳ね上がってしまって販売価格が3倍以上になってしまいます。
この時は流石に2ヶ月間ほど真剣に悩みました。前述の某氏には悪気など全く無かったのでしょうが、その時の私は「改善できるまでは追加発注はしません」という意味で受け止めていました。
この時の私は、「ワンストップの製造ソリューションが確立しているWindows PC用同人ゲームと同等のクオリティを求めるとか、無理難題にも限度があるだろ!」というのが本音でした。しかし、ここで引き下がってフェードアウトしていくのは正直言って悔しいではないですか。
ここから私のプライドを賭けた勝負が始まりました。次の3点を死守した上で、前述の某氏を驚かせてやろうと心に誓いました。
- 原価以上の見栄えに仕上げる
- 販売価格を可能な限り下げる
- 製造に係る労力を可能な限り軽減する
とある同人誌との出会い
まず最初に探したのは、パッケージングについてのノウハウを公開しているWebサイトや同人誌でした。そして辿り着いたのが「Doujin Game Package Design Vol.02」という同人誌でした。
www.rebrank.org
この同人誌、購入して本当に良かったと思います。とにかく誌面がクールなんですよ。実例を図鑑的な体裁で解説しており、読みやすい上に知りたいことは全て網羅されており、情報の過不足がない。
いやホント、これから同人ゲームを作ろうと考えているならマスト・バイなのは間違いないのですが、残念ながら現在は頒布されておりません。電子書籍でも構わないので再販して頂きたい一冊です。
しかし、ここで問題が発生しました。誌面で取り上げられてるのは全てWindows PC用同人ゲームですので、当然ながら媒体はDVD-ROMだけです。拙作「CELIA for X68000」は5インチフロッピーディスクですので、全く以て参考になりません。当たり前と言えば当たり前の話です。
他にも参考になるWebサイトや同人誌を探しましたが、結局見つけることはできませんでした。
この同人誌に書いてあった製造ノウハウは役に立ちませんでしたが、パッケージや取扱説明書を市販ゲームソフトのレベルまで引き上げるためのデザイン面でのノウハウは非常に役に立ちました。
創意工夫を経て…
「先人達によって蓄積されたノウハウを拝借する」という目論見は、この時点で見事に失敗に終わりました。
「あきらめたらそこで販売終了ですよ?」
「安西先生…同人ゲームが作りたいです…」
気を取り直して、5インチフロッピーディスクがぴったり入るケースを探す事にしました。
毎日何時間もググって調べるだけでは飽き足らず、外出した時は目に入る箱という箱の内寸を測っては「これじゃ入らないか…」とか「これは高過ぎるか…」とかブツブツと独り言を言ってはため息をつく日々。
そしてようやく、現在使用しているパッケージに辿り着きました。

元の製品の状態だと5インチフロッピーディスクを収納することができなかったため、内側の余分な箇所をアートナイフで切断する加工が必要でしたが、その程度の労力で解決できたのは非常に幸運でした。
ケースさえ選定できれば、あとは印刷物だけです。Adobe Illustrator*1を使ってジャケット、取扱説明書、フロッピーディスクラベル、スリーブ(所謂パンツ)のデザインを作成し、各印刷業者に発注するだけです。
原価は倍以上に跳ね上がってしまったものの、努力の甲斐あって「原価以上の見栄えに仕上げる」「販売価格を可能な限り下げる」「製造に係る労力を可能な限り軽減する」という目標を達成することができました。
前述の某氏からは「良くなりましたね!」とお褒めの言葉を頂きましたが、ここに漕ぎ着くまでにはこれだけの苦労と努力があったわけです。
斯くして、ようやくBEEP様へ再び納品できるようになりました。
2025/04/03 16:43追記
この時の無理難題を解決するために得たノウハウが、後にとても役に立っております。心から感謝しております。
まとめ
今はWindows PCが主流の時代ですから、レトロPCやレトロゲーム機に丁度良いソリューションが存在しないのは仕方がないことだと思います。また、それらが現役ハードウェアだった時代の即売会では、フロッピーディスクとコピー紙の取説1枚を梱包せずに手渡しするのが主流であり、良くてもOPP袋で梱包する程度でしたので、現代のスタイルでレトロPC向け同人ゲームを売るということ自体が非常に挑戦的な事なのだと思います。
宣伝
CELIA for MSX2が完成次第、CELIAシリーズのパッケージやデザイン等のソフトウェア面以外のノウハウや体験談を同人誌にしようと思います。
これからレトロPCやレトロゲーム向けに同人ゲームを作ろうと考えている人には参考になるかと思います。
間に合えば夏コミ(C106)、遅くても第15回マイコン・インフィニット☆PRO-68K(MI68)の会場で頒布しようと思います。